2021.11.17

「仏教戒律に学ぶ組織マネジメント」
龍谷大学 特任准教授
大谷 由香 氏

私は仏教学を専門とする研究者で、特に日本仏教の戒律思想研究を中心に研究を行っている。ロータリークラブは1905年にアメリカ・シカゴで始まった事業主中心の奉仕連合団体で、日本の組織も100年以上の歴史があるが、仏教はそれを上回る2500年以上の歴史がある。仏教創始者のお釈迦さんの教団(サンガ)運営方法から長く組織を継続させるヒントを探りたい。

お釈迦さんは35歳の時に、自身の提唱する教えに賛同する人たちを集めて、いわば「生きがいを追求するベンチャー」を立ち上げた。お釈迦さんは自身の教えが長く世界に存続するように、サンガという組織を維持するための「律」と、あるべき個人の心構えである「戒」を説いた。

サンガの運営方針として徹底されているのが、実は年功序列である。実際の年齢ではなく、組織に加わってからの年月が長い者が先輩として敬われる。また組織は合議制によって運営され、その時の会議はなるべく短時間で終わるように方法が決められている。サンガは仏教実践を主眼とする組織であるから、その本質に関わらないことはなるべく単純化されているのである。またサンガは賛同者からの寄付によって経営されるので、一人一人が賛同者の期待を裏切らない所作を身につけるように指示されている。

『大パリニッバーナ経』には、お釈迦さんが説いた組織を衰亡させない七つの法則が伝わっている。ここでは伝統やコンプライアンスを重視し、女性などのこれまで主権を持つことが難しかったマイノリティーを対等に扱い、また新しい発想を持つ者にとって快適な空間を用意できるのならば、その組織は誰にも壊すことができないと説かれている。

仏教の面白いところは伝統を保持せよ、社会規律を守れ、という一方で、個人の心構えとしては「自らの信念を貫くための変化を恐れるな」と説くところである。現状を打破しようとする者を常に迎え入れる組織こそ、打ち負かされることがない組織だと説くのである。

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