2021.10.27

「ラグビー日本代表を変えた『心の鍛え方』」
園田学園女子大学 教授
順天堂大学スポーツ健康科学部 客員教授
(株)CORAZON チーフコンサルタント
荒木 香織 氏

私は、中学から大学まで陸上競技(短距離)に打ち込んできた。思うようなタイムを出せない時の心の問題に興味が湧き、渡米して8年間、スポーツ心理学を学んだ。

考えていること、感じていることが、その人の行動に影響する。それを科学的、総合的に捉え、じっくりと前向きに、物事を遂行できるようにサポートするのが、私の仕事だ。

2012年、ラグビー日本代表のヘッドコーチであるエディー・ジョーンズ氏から、「選手のマインドセットを変えて欲しい」との求めを受けた。これが後に歴史的な快挙をなす日本代表チームのメンタルコーチに就いた瞬間だった。

当時のチームは、過去7回出場したW杯で1勝しかしていない弱小チームだった。選手たちのなかには「世界と互角に戦うなんて、どうせ無理」という空気が蔓延していた。それを「ぼくたちにも、できる」に変えるための挑戦が始まった。

まず、選手たちに欠けていたリーダーシップに着目した。リーダーシップは、組織の構築に必要な要素と言われる。真のリーダーシップとは、各選手の可能性を引きだす力だ。それは「スキル」だから、トレーニングで身につけることができる。

さらには、複数のリーダーの存在が、組織の繁栄・継続に効果的とされる。そこで、コアになる選手を6~8人集めて、「リーダーズグループ」をつくった。ラグビーにおけるリーダー、怪我をしている選手のリーダー、外国人選手のリーダーなど、複数のリーダーを選んで、チームをサポートする力を磨いた。最初の2年間はチームの基盤づくりとして、「勝つ」という文化を醸成することを目指した。3年目には「歴史を変える」、4年目には「自主性」というキーワードを加えて、メンタル面からチーム全体を強化していった。

一人ひとりが、リーダーシップを発揮できるように心を鍛えることで、選手たちのマインドセットが、前向きに変わった。彼らの努力は、2015年W杯での3勝、さらには世界の強豪・南アフリカに勝利するかたちで実を結んだ。

個人とチーム(組織)のパフォーマンスを維持・向上させる科学的なアプローチは、ビジネスを含めスポーツ以外の幅広い分野に応用できる。これからも様々な分野でサポートを続けたい。

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