2022.11.30

「羅城門の復活」
羅城門復活研究会 代表幹事
本田 一泰 氏

「羅城門(らじょうもん)」について話すと、「羅生門(らしょうもん)ですか」とよく尋ねられる。有名な小説や映画のタイトルは「羅生門」だが、実在した平安京の正門は「羅城門」だ。

羅城門は、平安京の南端、九条大路にあった。東寺と西寺跡の間にある南区唐橋の児童公園に、「羅城門遺址」の石碑が残る。

平安京に都を遷した当時、桓武天皇の権力基盤は弱く、唐や新羅の外圧が脅威となっていた。度重なる遷都で財政は苦しく、疫病や天変地異にも悩まされていた。だから永続する都を建設して外国へ国威を示し、人々の心と暮らしの平安を実現しようとしたのだ。

その都の玄関に荘厳な羅城門が建てられた。高さ約24m、幅約44mで、七間五戸。柱と柱の間が七つ、扉が五つあった。丹塗りで、緑釉瓦が使われていた。天皇即位の民衆への披露や外国使節を迎える場、国や民を守る祈りの場として、重要な役割を果たした。

羅城は都市を囲む城壁のことだから、羅城門は城壁に穿たれた門を意味する。それを門の固有名称にした。平安京に城壁はない。この門に、人々を守る羅城の機能を果たすべく仮託して、「羅城門」と名付けたといわれる。

8世紀末に造られた羅城門は、10世紀末に大風で二度目の倒壊に至ったあと、放置されて荒れ果てた。それでも人々の記憶には残り、特異な場所として、文学作品等に表現されてきた。荒れ果てた門の雰囲気と大江山の鬼伝説が融合して、能の「羅生門」という謡曲が生まれた。その特異な雰囲気が、のちの小説や映画へつながったとされる。近年のアニメには、人々を悪から守る象徴として「羅生門」が登場する作品がある。羅城門から派生したインスピレーションは時代と共に変化していることを示している。

羅城門の復活には、110億~130億円の財源が必要だ。建設に相応しい候補地の絞り込みと調整も進んでいる。なんとしても実現させたい。

復活が叶えば、西暦980年の倒壊からおよそ千年ぶりの大事業になる。時代を超えて、文化、芸術等に多様なインスピレーションを与えてきた羅城門のリアルな復活は、さらに新しい文化の創出につながるだろう。古の建築技術や、心と暮らしの「平安」の象徴が復活する意義も大きい。

多くの皆様のご参画、ご協力をお願いしたい。

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