2022.4.27

「What is Design?[デザインって何?]」
大阪芸術大学デザイン学科教授
大阪芸術大学附属 大阪美術専門学校校長
三木健デザイン事務所代表
三木 健 氏

ノーベル賞の受賞者がよく「セレンディピティ(Serendipity)」という言葉を使う。「偶然の産物」「偶然の幸運に出会う能力」という意味だ。セレンディピティはデザインにおいても大切だ。だから、うちのデザイン事務所ではあえて「本箱を整理しないこと」を推奨している。何かを探す過程で生まれる思考の道草や寄り道によって「偶然の幸運に出会う能力」が鍛えられると考えているからだ。

デザインとは何か、という本題に移ろう。暮らしのなかには、デザインがあふれている。あらゆる物も、料理のレシピや掃除の仕方もデザインと呼べる。わくわく、ドキドキ、何だかうれしくなるようなモノやコト、それがデザインの肝だ。

デザインとは「考え方を考える」仕事でもある。そのため、大事なコトやモノをしっかりと見極める作業が最も重要だ。私はそれを伝えるために、大阪芸術大学で「APPLE」というプロジェクトを展開している。

授業の題材は「りんご」。ほとんどの学生は「りんごを知っている」と言う。だが、「知っているつもり」になってはいないか。そこが出発点だ。まず、りんごを観察して理解する。例えば、細い紐を周囲にぐるぐると巻きつけ、その紐をほどいて長さを測る。むいた皮をタイル状に敷きつめて面積を測る。こうした作業を通して、りんごをカラダで理解していく。あるいは、自分のものさしを作ってみる。りんごを虫眼鏡で見ると、想像以上に多くの色が見つかる。赤色だけでも無数にある。一人ひとりの感性で色を見つけ、自分だけの「りんご色見本帳」を作る。このワークショップのプロセスをファイリングすれば、学生の体験が付加された新しいスタイルの教科書が完成する。

「APPLE」は、「気づきに気づく」という発想法を伝え、デザインの本質を理解するうえで企業活動にも応用できるプロジェクトとして注目されている。プロジェクトの詳細は、学内の「りんごデザイン研究所」から国内外へ広く発信している。

「What is Design?」――暮らしに寄り添い、観察する。社会の課題を探す。みんなの笑顔を想像する。すると「気づきに気づく」偶然の幸運に出会い、それがデザインのヒントになる。皆にそれを伝え、喜びをリレーする。理念を可視化する。それがデザインだ。

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