2021.9.8

「『大地変動の時代』を
京都で楽しく賢く生き延びる知恵」
京都大学名誉教授・京都大学レジリエンス
実践ユニット特任教授
鎌田 浩毅 氏

2011年に発生した東日本大震災は、平安時代の貞観地震以来、およそ1000年ぶりの巨大地震(マグニチュード9)だった。この地震をきっかけに「大地変動の時代」が始まった。日本列島は地盤が不安定になり、ここ10年、地震の頻度は約5倍に増えている。火山でもマグマ溜まりが不安定さを増し、現在、富士山はじめ20の活火山が、噴火スタンバイの状態にある。

今、最も心配されるのは、南海トラフ巨大地震だ。2030年代に必ず起こる。マグニチュードは9.1。内閣府「中央防災会議」の被害想定では、犠牲者32万人、被害総額220兆円になるという。日本の経済・社会は壊滅的な状況に陥るだろう。

南海トラフで地震が起きれば、関東から九州の太平洋沿岸を津波が襲う。想定される高さは最大34メートル。水の塊が、和歌山県や高知県ではわずか3分で押し寄せる。首都圏でも高層ビルが相当揺れて、ライフラインが止まるだろう。全国で約6000万人が被災すると言われている。

甚大な被害が想定されてはいるが、本気で怖がって、今から準備を始めれば、被害を8割は減らせる。ハード面では、防潮堤や津波タワーの整備、耐震補強、高台移転などを急がねばならない。ソフト面では、若者への教育を含め、巨大地震に備える重要性を広く発信して、人々の防災への意識を高める必要がある。

私たち火山学者は「長尺の目」で事象を捉える。「過去は未来を解く鍵」でもある。長い目で歴史を振り返ってみると、100年に1回起こる南海トラフ巨大地震の発生は、社会がリセットされる時期と重なっている。「安政南海地震(江戸時代後期)」のあと、明治維新を経て日本は大きく変わった。「昭和南海地震」の発生は終戦直後の1946年。その後、日本は復興し、高度成長期へと進んで行った。地面が揺れ、社会が壊れても、次世代の若者の力、新しい発想が日本を建て直してきた。次に起こる南海トラフ巨大地震も、日本が生まれかわるきっかけになるに違いない。

南海トラフ巨大地震が起きれば京都も被災は免れない。だが、津波は来ない。だから京都は、他の被災地を支援する役割を担うことになる。その時には、企業、大学など、みんなで知恵を出しあい、新しい日本を支える産業や文化を、京都から発信していきたいと考えている。

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