2020.12.9

― 新会員スピーチ ―
「京都の顔 30年」
日本経済新聞社 京都支社長
稲荷 竜也 君

私は約30年前、京都で記者生活をスタートしました。当時の大きなテーマが平安建都1200年記念事業でした。1994年は平安京ができてから1200年の節目。事業の推進母体、平安建都千二百年記念協会理事長だった千宗室裏千家家元(現在の千玄室大宗匠)はインタビューでこう語っています。「古い都を守るだけではなく、新しい京都をつくっていかねば街の活力が低下する」。数々の記念事業が立ち上がり、それらがいま京都の顔、シンボルとなっています。まず京都駅ビルの建て替え。設計コンペに黒川紀章氏、安藤忠雄氏らそうそうたる建築家が参加し、結果は東京大学教授だった原広司氏が当選しました。安藤氏はのちに日本経済新聞の私の履歴書で吐露しています。「駅ビルの大階段をみるたびに悔しさがこみ上げる」。当時、厳しい高さ規制下でのビル高層化の是非をめぐる景観論争が巻き起こり、60メートルを目指す新ビルは渦中にありました。特例措置を使って規制をクリアするわけですが、今や堂々たる古都の玄関口となっています。

当時、関西文化学術研究都市は建物が点在する黎明期でした。東の「つくば」との違いは民の活力。ノーベル賞級の学者を招聘する国際高等研究所にはオムロンの立石一真氏、ワコールの塚本幸一氏らが自社株を寄付しました。ある日、学研建設の立役者の1人だったムーンバットの河野卓男氏を訪れると、都市全体を碁盤の目のように道路が走る地図を広げていました。古代の条里制をイメージして理念を構築する、と。都市名に文化が刻まれたワケを感じました。学研は研究所用地が足りないほどの一大都市に成長しています。

昨年30周年を迎えた京都リサーチパーク、昨春開業した京都経済センターも記念事業の一環でした。経済センターは30年の時を経て結実したわけです。振り返ると、いろんな人がさまざまな思いを込めながらその時々の京都をつくっていることを感じます。いまコロナ禍にありますが、今いらっしゃるかたがたがこの危機を乗り越え、また新しい京都をつくっていくのだと思います。

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