2019.10.30

「滋賀大学が進めるデータサイエンスの社会実装」
滋賀大学 データサイエンス学部 学部長
竹村 彰通 氏

スマートフォン、交通カード、人工衛星など、機器や通信技術の発達によって、大量のデジタルデータが集められる時代になった。そのビッグデータを処理・分析して、新しい価値を創造するのが「データサイエンス(DS)」だ。ビッグデータは「21世紀の石油」といわれ、この新しい資源の活用をめぐってDS分野への期待が高まっている。

データサイエンスは学問的に三つの要素から成り立っている。データの収集・加工・処理をする情報学。整理されたデータを分析する統計学。その分析を応用して新ビジネスなどにつなげる価値創造の分野だ。三つ目の応用は文系的なので、DSは文理が融合した分野といえる。

日本は残念ながら、この分野において立ち遅れている。データを分析する人材も不足している。諸外国の大学に多い統計学部・学科が、日本に皆無だったことも一因だろう。日本政府もここ数年、データの利活用により付加価値を生み出す新事業創出の重要性、DS教育の必要性などを国家戦略として盛り込むようになっている。

そのようななかで2017年、滋賀大学に日本初のデータサイエンス学部が誕生した。今年4月には大学院を設けた。金融・製造・IT系など多様な企業からの派遣社会人など24人が学んでいる。来年度には博士課程も開設する。教員数をさらに増やし、教育・研究内容の充実を図っていく。

企業等との共同研究については、DS学部設立に先駆け、データサイエンス教育研究センターを中心に進めてきた。学部設立以降、企業や自治体との連携はさらに加速し、2019年4月現在で、連携協定40件以上、その他共同研究等を含め延べ100件以上の連携プロジェクトが動いている。プロジェクトを通じて、学生たちは実際のデータを活用した価値創造を体験できる。大学としては、機械学習、深層学習など、データサイエンスのあらゆる手法を企業に提供している。

ビッグデータの活用は今後さらに進むだろう。データさえ揃えれば、様々なことが自動化できる。だが機械はデータをもとに人間の真似をしているに過ぎず、理解して因果を示してくれるわけではない。この点には注意する必要がある。

今後も企業との連携を深め、幅広い分野で活躍できるデータサイエンティストの育成とデータサイエンス分野の進展に力を尽くしていきたい。

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