2019.10.9

「ネット時代の新聞」
産経新聞社 代表取締役社長
飯塚 浩彦 氏

私は昭和56年に産経新聞に入社した。大阪の社会部時代には、いち早く事件現場に駆けつけて目撃者の声を拾った。事件の捜査員に夜討ち朝駆けをして、ライバル紙より早く記事を書く。そういう競争の日々を過ごした。

ところがインターネットの浸透によって、その様相は一変した。記者が駆けつけるより早く、事件の目撃者がそのリポートや動画をSNSでアップする。取材のあり方は大きく変わり、情報の伝達者、仲介者であると思っていた新聞が、「中抜き」される時代になった。そのような状況のなかで我々は何をすべきか。模索を続けている。

新聞の発行部数は、ネットの普及と反比例するように減り続けている。新聞よりも、テレビやヤフーなどのポータルサイトでニュースを得る人が増えた。ニュースの「新しさ」において、新聞はネットに敵わない。それでも「情報の正確さ」から、新聞への信頼性は依然として高い。

ネットニュースと新聞では情報の取り方が異なる。ネットニュースはいわば好きな物だけを選んで食べる「偏食」だ。一方、新聞は「バランス栄養食」だと思う。新聞には「寄り道の文化」がある。自分の読みたい記事を探しながら、ついつい他の記事も読んでしまう。子どもや若者には特に、バランスよい知識が身につく新聞に親しんでほしいと思う。新聞の閲読は学力アップにつながる、という文科省の分析もある。

ネットメディアがあれば新聞ジャーナリズムは不要なのか。いや、そうではない。問題意識をもって取材し、記事にするのが新聞だ。誰かが書かなければ闇に葬られてしまう問題を暴く。これこそ新聞ジャーナリズムの真骨頂だと思う。さらに、新聞社はお金をかけて信頼される情報を流している。幾重にもチェック体制を組み、責任をもって情報を発信する。ネットには新聞記事の転載も多いので、極論だが、新聞がなくなれば、ネット上はフェイクニュースであふれるだろう。

新聞各紙には、それぞれの論調があってよい。産経新聞は保守色の強い現実路線の新聞だ。世におもねることなく、あらゆる勢力からの干渉を排除する姿勢を貫き、「日本に産経新聞があってよかった」と言われる新聞をこれからも目指していく。産経新聞の、ひいては新聞の読者が増えるよう、皆様のご支援をお願いしたい。

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