2019.9.4

―新会員スピーチ―
「TVプロデューサーという仕事」
NHK京都放送局 局長
田波 宏視 君

テレビの番組制作では、プロデューサーが責任者で、ディレクターがプレーヤーです。現場で取材したり、撮影や編集を行うのはディレクターで、プロデューサーは必要に応じて修正を指示したり、その番組枠がもっと魅力的になるように改善するのが仕事です。

ディレクター時代は目の前の一本を面白くすることで精一杯でしたが、プロデューサーになってからは「幅広い視聴者に見てもらえる番組枠を作ること」が大きな命題になりました。

背景には、若い世代が年々NHKから離れているという厳しい現実があります。今年の調査では、1週間に5分以上見てくれている20代は36%、30代は47%に留まり、主な視聴層は高齢者という結果でした。しかも「年齢を重ねるとNHKを見るようになる」ということも幻想になっています。どうしたら普段からもっと見てもらえるのかを真剣に考えないと、公共放送の未来が危ぶまれる事態になっているのです。

最初に新番組の開発に携わったのは『プロジェクトX』でした。この番組では「無名の群像の成功物語」に焦点を当て、ナレーションやテーマ音楽にも特徴を持たせることで、好評を得ることができました。自分と同じような無名の人たちの成功物語が、サラリーマンを中心に共感を呼んだためだと思います。

ドキュメンタリーが苦手な若者にも見てもらおうと開発したのが、『ドキュメント72時間』でした。「小難しくてつまらない」、「作り手の作為が感じられて嫌い」といった声を乗り越えるために、「身近な場所を3日間ひたすら見つめる」「撮影した順番を変えずに、起きたままを見せる」など、従来のセオリーから抜け出すことで、ある程度視聴層を広げられたと思います。

「最近のNHKは民放化している」「公共放送は真面目な番組だけでいい」という批判をいただくこともありますが、テレビ離れは急速に進んでいます。『チコちゃんに叱られる』も、そうした危機感から生まれた番組の一つです。プロデューサーたちの必死の試行錯誤を、番組を見ながら少しでも感じていただけたら幸いです。

   

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