2019.7.31

「参議院選挙後の内外情勢」
同志社大学 法学部 教授
  村田 晃嗣 氏

日本では先般、参議院選挙が終わった。一方でアメリカはこれから、2020年11月3日の大統領選に向かって動いていく。トランプ大統領は再選されるのか。前回の大統領選でトランプ氏が勝利したペンシルベニア、フロリダなどの州では今、トランプ氏が支持率を落としているが、アメリカ全体の世論調査では、50数%の人がトランプ氏は再選されると答えている。再選に有利な条件が揃っているからだ。好景気が続き、失業率は3.7%と極端に低い。戦争をしていないので戦死者が出ていない。これらは現職に有利に働く。一方の民主党では立候補者が乱立し、党内が分裂している。民主党最有力候補のジョー・バイデン氏が76歳と高齢で、変化を求める有権者の支持を得るのは難しい、ともいわれている。

アメリカで、党派を超えてコンセンサスのあるテーマの一つが対中戦略だろう。米中の貿易摩擦については、経済の相互依存が大きいので、中国と戦えばアメリカも大打撃を受ける。それでもアメリカが中国と戦おうとするのは、10年後には勝てなくなると考えているからだ。

アメリカは、新しい法律をつくり、安全保障関連の企業等に対する中国からの投資を規制している。中国人留学生に対してビザ発給の審査を厳しくするなど人的交流の規制も強化した。科学技術分野で中国に逆転されることを恐れている。ビッグデータの集積など、拡大しつつある科学技術分野の多くは、国が強力に主導できる非民主主義国に圧倒的に有利だからだ。

2030年代のある段階で中国は、世界一の経済大国になるだろう。だが、その頃の中国では、生産年齢人口の減少、貧富の格差拡大、環境問題など、多くの国内問題が噴出する。

そのとき中国が、国内的無秩序から国民の目をそらすために、無謀な対外行動に出たりしないか。それを回避するために、アメリカは今世紀半ばまでを見据えた大戦略のなかで動いている。同盟国の日本とオーストラリア、そしてインドを結んだ菱形のエリア「戦略的ダイヤモンド」をつくりあげ、中国の動きを封じ込めようとしている。

アメリカについては、党派的対立という国内の文脈と、国として進めようとしている長期的戦略を重層的に、バランスよくみていく必要がある。そして日本は、アメリカの大戦略についていく覚悟があるのか、問われていると思う。

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