2019.6.12

「御大礼の仕事」
(株)井筒装束店 代表取締役社長
佐織 鉄郎 氏

井筒装束店は伊勢の神宮様からのご用命、京都では祇園さん、お稲荷さん。東京では宮内庁、明治神宮様など皆さんよくご存知のところから、地元の決して大きくないお宮さんからのご注文を多く受けて仕事をしております。営業担当社長としてお客様と直にお話をし、神様(みたま)への思いと商売とのバランスをとりながら仕事をしています。

令和元年となるこの御代替わりに於ける御大礼即ち即位礼と大嘗祭の装束・調度品の仕事を宮内庁より受けていろいろと経験しましたこと、感じましたことを、今日はお話ししたいと思います。

今回の御大礼の準備は2年ほど前の平成29年8月1日、皇居の宮内庁の総合倉庫にある装束の点検から始まりました。使える装束と新調すべき装束に分類する仕事です。この点検と打ち合わせから1年以上経った平成30年秋に次の動きが始まりますが、始まった時にはすでに時間が切迫しているという状態でした。京都と東京の宮内庁の御用を受ける装束屋3社で手分けをし、また、協力をして装束、調度品を急ぎ制作調整できるよう準備に取り掛かりました。

昨年末に政府が発表しました即位関連の予算は166億円でした。装束・調度に係わる予算は数億円という事で、総予算からすると僅かではあります。しかし、儀式に係わる装束ですので、井筒としても総力を挙げ、皆さんがテレビや本でこれから見ていただければ晴れすると思うところです。

令和の御代になって最初に皆さんがご覧になった今上陛下がお召しになっておられた茶色っぽい黄色の装束は黄櫨染の御袍といいます。夏物の穀織紗(こめおりしゃ)という紗の生地です。胸の下の白い帖紙が透けていて涼しそうでした。勅使発遣の儀では固地の白い御引直衣姿でした。固地とはいえ平安時代そうであったように薄く透けるような繊細な織りで織られた綺麗な生地のものでした。下に着ておられた二藍の紫が透けているように見えたかもしれませんが、実はあれは光線の影がそのように見えたものでした。

この秋に儀式でお召しになられます装束は新調されたもの、補修しましたもの合わせて4トントラックと2トントラックに積んで納品いたしました。

連休明けに、期日報告の儀と勅使発遣の儀の習礼と本番があり、賢所での臣下の方々の衣紋や宮殿での勅使の方々への着付けをし、併せて神宮、陵墓へ向かうトラックへの搬入なども致しました。これから秋の即位式、大嘗祭へ向けて仕事は続きます。

耳慣れない専門的な言葉もございまして難しい点もあったかと思いますが、最後までお聞きいただき、本日は誠にありがとうございました。

   

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