2018.12.5

― 新会員スピーチ ―
「取材経験から」
毎日新聞社 京都支局 支局長
今西 拓人 君

1991年に毎日新聞社に入社し、大阪本社の社会部と科学環境部で長く仕事をしてきました。今年の4月、京都支局長に着任しました。生まれ故郷の京都に赴任するのは初めてです。

印象に残っている取材経験の一つとして2002年、ノーベル賞の担当記者だった時に、島津製作所の田中耕一さんがノーベル化学賞を受賞された時のことがあります。広く知られた存在ではなかったものの、企業内研究者であり、ご本人のお人柄もあって、大きな話題になりました。ノーベル賞の主催団体は事前の取材には一切応えません。つまり、誰が候補に挙がっているか、全く分かりません。発表を聞いてから取材をし、記事を書いていては間に合わないので、誰が受賞しても速やかに原稿を出稿できるように、予定原稿を準備しておきます。そのために日ごろから候補とされる研究者をマークし、研究内容や人となりを取材し、原稿を作り上げておきます。ただ、田中さんはノーマークでした。何の準備もできていませんでした。受賞が発表され、社内は騒然となり、大半の記者が呼び出されました。米国の同時多発テロや阪神大震災、東日本大震災などと同じぐらいの慌ただしさでした。それほどの「事件」だったと言えるでしょう。記者会見に出向く記者、発表資料を読み解く記者、関係者に電話取材する記者。手分けして、何とか締め切りまでに形を整えることができました。

新聞の役割とは何か。ニュースを報じる他にもいろいろあります。私は戦争を二度と繰り返さないことに寄与することが大きな役割だと考えています。そのために何をしなければいけないのか。簡単ではありませんが、まず、他者の存在を認めることが大事だと思っています。一つの問題に対して多様な考え方や意見を示す媒体。それがこれからの新聞の一つのあるべき姿なのではないか、そんなことを考えています。

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