2018.6.13

「認知症の予防法」
医療法人 知音会 理事長
田邉 卓爾 氏

日本の人口は、2053年には1億を下回るといわれる。少子高齢化が進み、社会保障費の増大と生産年齢人口の減少による国力の低下は避けられない。認知症患者も増えると予想されるなか、より多くの高齢者が元気に活躍することが、日本にとって極めて重要になると思っている。

認知症とは、何らかの原因により脳の細胞の働きが悪くなって様々な障害が起こり、生活に支障が出る状態を指す。記憶障害、日付などが把握できない見当識障害、判断力の障害など中核症状が現われ、それに伴って不安や抑うつ、人によっては暴力や暴言など周辺症状が出てくる。

加齢による物忘れとは違う。前日の夕食メニューが思い出せないのは加齢による物忘れだが、「食べてない」と言い出したら認知症を疑う。

認知症の6割を占めるアルツハイマー型では、脳にアミロイドβという物質が沈着し、そこから脳の神経がダメージを受けて、記憶障害などの症状が出てくることがわかっている。アミロイドの沈着は40代から始まるといわれる。

アルツハイマー型認知症の治療薬はまだないが、認知症を予防・改善する方法はある。まず大切なのは、早期発見・早期介入だ。MCI(軽度認知障害)という認知症の前段階で発見すれば打つ手が増える。早期発見のために60歳を過ぎたら認知症検査を受けていただきたい。

認知症は多因子疾患であり、発症や進行に多くの要素が影響する。発症因子には、食事、運動、睡眠、社会的つながり、ストレスマネジメントなどが挙げられる。できる限り多くの要因を同時に改善することが予防につながる。

食事は「地中海食」が最も効く。全粒穀物、季節の野菜や果物、豆類の摂取を増やし、肉は鶏肉や魚をメインに。夜より昼食でたくさん食べる点も地中海食の特色だ。次に運動。週3回以上、早歩き以上の運動をする人の発症リスクは50%減るといわれる。最近の研究では睡眠中に脳内の老廃物が排出されるといわれている。睡眠薬などを服用せずに8時間の睡眠をとることが推奨される。また社会的つながりの乏しい人は、十分な人に比べて約8倍、認知症の発症が多い。

生活習慣の見直しが認知症の予防につながる。すべての因子の同時改善に努めて、PPK(ピンピンコロリ)を目指していただきたいと思う。

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