2018.4.11

「何に自分の命をかけるか」
写真家、機械式カメラ修理職人
SALLEY 育緒 氏

カメラ撮影の仕事を始めて約30年になります。20代の頃にはメキシコに拠点を置き、危険な場所への撮影にも出かけました。ある時、ボリビアのジャングルにあるコカイン精製工場へ乗り込む政府軍に同行し、銃撃戦のあと工場を焼き尽くす光景をカメラに収めて「いい仕事をしたな」と思っていました。ところが、後にカメラマン仲間から実情を聞かされて愕然としました。それはボリビア政府が海外メディアに対して、いかに厳しくコカインを取り締まっているかをアピールする茶番だったというのです。

そんな空しい出来事も経て、海外での仕事をやめて帰国しました。ちょうど写真の仕事がフィルムからデジタルへの移行期でした。私はその流れに背を向けて、なぜか写真はフィルムで、と拘るようになっていました。出版社から「デジタルカメラに持ち替えないと仕事がなくなるよ」と言われたこともありました。

フィルムを使うアナログカメラの一つに、電池を使わない機械式カメラがあります。実は帰国してまもなく、私は機械式カメラの修理職人特集を雑誌で見て名人・直井浩明氏のもとへ押しかけ、頼み込んで弟子にしてもらいました。修理用の工具作りから始めて、いろんなカメラを壊しては組み立てました。

フィルムは光と銀の化学反応なので、画面に何が起こるかわからない、無限の可能性を秘めています。それを捨てられますか、という思いを抱くようになりました。修理すれば、100年前の機械式カメラがあと100年使えるようになる。こういう素晴らしい物をなんとかして残したい、という気持ちがどんどん強くなりました。

私は今、生涯をかけて、フィルムのよさを多くの人に伝えていきたい。フィルムカメラを残したいと思っています。最近になって富士フイルムがモノクロフィルムの生産を終了したことは、私にとってかなり衝撃的な出来事でした。

私はフィルムカメラを残すために、デジタルカメラの勉強も始めました。敵のことも知り、それぞれの魅力を明確に伝えられるようになりたいと考えています。フィルムカメラの使い方、撮影の楽しさを伝える機会を増やさねばなりません。写真の同好会などにお呼びくだされば大変うれしく思います。

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