2018.2.21

「マンガはどこまで届くのか?」
京都精華大学学長・漫画家
竹宮 惠子 氏

日本のマンガは今や世界中に届いている。最初はみんな「海外では受け入れられない」と思っていた。日本のマンガは右綴じで、縦書きだし、ストーリーは左に流れる。海外は綴じも逆だし、横書きで、右に流れる。開きも違うし、流れも違う。スピード感や臨場感を演出する「ドカーン」とか「シーン」というオノマトペも特殊で、日本語に密着しているからだ。ところが、日本のマンガはうけた。それは、絵の魅力で始まった。最も敏感だったのがフランス。今でも京都国際マンガミュージアムを訪れる海外からの客の中ではフランス人が一番多い。フランスの本屋では、日本人の駐在員家族のために日本のマンガを置くようになったが、フランス人が買っていく。私がエルメス社からマンガで社史を作ってほしいという依頼をされたのも、当時の社長の息子の奥さんが「キャンディ・キャンディ」をみて、日本のアニメのすごさに気づいたからだった。

なぜそれほど興味をもたれたのか。米国の「フル・アニメ」に対して、日本のアニメ界は限られた数の絵で省力化を図る「リミテッド・アニメ」という手法を編み出した。その手法はスピード感など独自の効果を生み出し、「ジャパニメーション」とさえ呼ばれ、評価されている。マンガ界では戦後、多くの作品が描かれてきたが、いいと思った手法は誰でも利用できる。業界内で培われてきた方法論を身につけることがプロの条件とさえなっている。このように日本のアニメやマンガは他にないアプローチやポテンシャルを持っており、その〈超独自性〉ゆえに、外国の人たちに日本語や日本に興味を持たせ、日本を世界に紹介することに役立っている。マンガで日本語を覚え、日本の生活習慣を学び、日本人よりも日本の知識がある外国人も増えている。

マンガは絵とセリフの同時進行によって読者が物語を自発的に理解できるように作られていることですばらしい〈共有性〉を生み出している。世界はそこを評価している。驚異的な伝達力で、もはや届いていない国はないとさえいえ、スポーツと同じように世界共通語になれるかもしれない。

京都ロータリークラブ
〒604-0924 京都市中京区河原町通御池上るヤサカ河原町ビル4F
Tel 075-231-8738 Fax 075-211-1172
office@kyotorotary.com

Copyright (c) 2007 Rotary Club of Kyoto. All Rights Reserved. Site Map