2018.2.14

「緊迫の国際情勢と日本外交」
立命館大学 特別招聘教授
薮中 三十二 氏

ドナルド・トランプ米国大統領の就任から一年が過ぎた。人々はトランプさんの過激な言動に慣れてきた感じがする。そう悪くないと感じている人もいるかもしれない。だが、トランプ政権はやはり不安定だ。ロシア疑惑の追及は続き、政権の足を引っ張っている。ホワイトハウスの陣容も全く整っていない。外交スタッフさえ不在の状況が続いている。

そのトランプ政権と、安倍首相はうまくつきあっている。トランプさんの懐へ入る作戦は大成功だった。彼に「安倍はおれに忠実」と思わせたことで、防衛費や貿易不均衡についても日本にはあまり強く文句を言ってこない。それでも、安全保障面で日本を守ってくれるかどうかは不透明だ。また、安倍首相には誤算があった。それは米中関係の良好さだ。トランプさんは「習近平といい関係」と何度もツイートしている。安倍政権が中国との関係を軌道修正しようとしている理由はそこにある、という気がする。

国際情勢について言えば、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」という言葉に象徴されるように、アメリカが世界のリーダーをやめると言いだした。世界はリーダーレスの時代に入った。そのうえ、ここ70年ほど軍縮の方向に動いてきた世界が今、軍備拡張の時代に入った。極めて危険な状況だと思う。さらには緊迫する北朝鮮情勢からも目が離せない。

北朝鮮の動きをみると、経済的な制裁が相当効いていると思われる。平昌五輪にやってきた金正恩さんの妹・金与正さんは、金正恩からのメッセージとして南北首脳会談開催の意向を韓国の文在寅大統領に伝えた。これは今後、大きな意味をもつだろうと考えている。

北朝鮮は今後一年以内に米国本土を核ミサイルの射程に入れる、とアメリカはみている。今ならそれを止められる。アメリカが武力行使に出るのか、中国の仲介による対話の道を選ぶのか。トランプさん自身の言動のぶれも大きいので予測が難しい。少なくとも、オリンピック休戦の後、制裁も米韓軍事演習もこれまで通りにはいかないだろう、と私はみている。日本はすでにミサイルの射程圏内にある。わが国はどのような役割を果たすのか、考えねばならない。

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