2018.1.31

「iPSテクノロジーがもたらす創薬革命」
(株)iPSポータル 代表取締役社長
村山 昇作 氏

私は大学を卒業するまで京都で育った。その後40年間は京都を離れ、6年前に帰って来た。現在はiPS関連の仕事をしている。

iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、再生医療だけでなく、薬の開発にも大変な威力を発揮する。私どもはiPSのそういった面に着目し、創薬の現場に革命を起こしたいと考えている。

従来の創薬においては、動物試験がうまくいっても、ヒトでうまくいくとは限らないという問題があった。あるいは、同じ薬でも、効く人と効かない人がいるが、前提としては、平均的に効くことを証明しなければならない。新しい物質が様々な試験を経て、薬として承認される確率は1万分の1から3万分の1だ。結果として、創薬のコストは莫大になり、開発リスクが高くなる。そこが課題だった。

iPS細胞を使えば、ヒトに投与する前に、新薬の安全性試験ができる。これによって試験の最終段階で失敗する確率は激減する。あるいは、薬の効果を調べて、特定のグループに的を絞った薬を創ることも可能になってきた。さらに薬の効能を、実際の患者さんで調べる代わりに、患者の血液から作った「疾患iPS」(病変をもつ細胞)を使って調べられる。既存の薬について、これまで知られていなかった効能を見出せる可能性も高まっている。

私どもの「疾患iPS細胞事業」が目指すゴールの一つは開発コストの低減だ。効く薬だけが処方されれば患者さんのQOL(quality of life)向上にもつながる。一方で、効かない薬の処方が無くなれば医療財政負担を軽減できるだろう。

私は日本銀行で長い間、金融政策にも関わった。当時から、金融政策だけでは日本経済は復活しないと考えていた。企業の投資がカギだろう。その投資対象となる魅力的な新規分野として、iPSがあると思っている。

当社は創薬や再生医療を直接には手がけない。そういう事業に必要なツールやインフラを提供してチャレンジする人たちの成功率を高め、新しいビジネスチャンスを皆様にお届けしたいという思いがある。ご支援くださっている京都大学iPS細胞研究所の先生、企業、京都府などの皆様と共に、この京都の地で、もうひと仕事やり遂げたいと思っている。

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