2017.10.25

「緊迫する国際情勢下で私たちはどのような国際貢献ができるか」
作家、元外務省主任分析官
佐藤 優 氏

緊迫する北朝鮮情勢。とくにここ1週間、緊張が高まっている。先週まで1万分の1くらいだった第2次朝鮮戦争の可能性が、1000分の1ぐらいになったと感じている。原因はトランプさんと金正恩さんの「売り言葉に買い言葉」だ。ふたりには似ているところがあって、磁石のN極同士のように反発し合うから、外交の合理性では考えられない事態が起こるかもしれない。

緊張が高まるなかで、私たちに大切なのは、恐れるべきことを恐れ、怖がる必要のないことは怖がらない、という姿勢だと思う。

ここ2カ月、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことに我々はパニックを起こしているが、これは大した話ではない。北朝鮮が、国連安全保障理事会の決議でロケットやミサイルの打ち上げを禁止されているにも関わらず、違反を繰り返すのはたしかに重大な問題だ。だが、彼らが言うように、爆弾を載せた「ミサイル」でなく、爆弾を載せていない「ロケット」の実験だというのも嘘ではないのだ。

北朝鮮のミサイル発射について、小野寺五典防衛相は8月29日、「日本の領空を約2分間飛翔した」と記者団に説明した。ところが北朝鮮のミサイルが飛んだ高さは地上550㎞。「領空」でなく、正しくは「上空」だった。安倍政権がパニックを起こしていたことは、この言い間違いに現れていた。私は、外務省や防衛省の実務家の知識不足が、今回のパニックを引き起こした側面もあるとみている。

9月3日に北朝鮮が核実験をした。核を保有し、大陸間弾道ミサイルをつくり、アメリカを交渉に応じさせて、現体制を保全するのが北朝鮮の狙いだと思われる。

アメリカはどう出るか。戦争は避けたい。北朝鮮が大陸間弾道ミサイルさえ開発しないならば、北の核はいい、とする可能性もある。アメリカまで飛んでこないならよい、ということだ。そうなると、日本は北朝鮮の核ミサイルの射程圏内に入ってしまう。

戦争は避けられるのか。あるいは、現在のような緊張は続くのか。このような状況下にあって、わが国として判断を誤らないために、情報を正しく分析することがますます重要になってくると思う。

京都ロータリークラブ
〒604-0924 京都市中京区河原町通御池上るヤサカ河原町ビル4F
Tel 075-231-8738 Fax 075-211-1172
office@kyotorotary.com

Copyright (c) 2007 Rotary Club of Kyoto. All Rights Reserved. Site Map