2017.5.24

「貧困が奪う子どもと社会の未来」
特定非営利活動法人山科醍醐こどものひろば 理事長
村井 琢哉 氏

わが国では、相対的貧困の状態にある子どもが6人に1人いるという。だが、町なかを見渡してもそうは見えない。「貧困」の認識が変わったのだ。かつては誰もが生きることで精一杯だった。生活水準が上がり、いろいろなことが当たり前にできるようになると、あらゆる権利をお金で買わなければならなくなった。その結果として、相対的な貧しさから、生きづらさを感じ、劣等感をもつ子どもたちが増えている。

さらに、「貧困」はお金の問題だけではなくなっている。虐待、いじめなど、様々な困り事を抱える子どもが増えている。両親の喧嘩を見せるのも精神的虐待とされる。いじめも暴力ばかりではない。友人とSNSでつながり続けていないと仲間はずれにされる。じわじわと精神的に追い詰められていても周りの大人が「いじめ」と認識せず、対応の遅れによって、自殺や転校に追い込まれる子もいる。

貧困ゆえに孤立する子どもたちの高校・大学への進学率は低く、結婚・出産は早い。短いサイクルで貧困が再生されていく。2035年のわが国では、65歳以上の高齢者1人を、1人の現役世代が支えることになる。そのうえ若者の貧困率が上がれば、日本の社会保障制度は破綻するだろう。

子どもや青少年を支える活動の多くは、虐待やいじめ、不登校など、目に見える問題への対処療法だった。いわばモグラ叩きだ。それはそろそろ限界にきている。モグラが出てこない土壌づくりを社会全体で真剣に考える必要がある。子どもたちの最低限の文化的生活、幸福の追求という権利を守るために、どのような社会に変えていくのか。目指す社会について皆が共通の理解をもつことが大切だと思う。

「山科醍醐こどものひろば」は活動を始めて37年。地域のすべての子どもたちが心豊かに育つ環境づくりを目指してきた。貧困があるから子どもに関わるのではなく、子どもたちの変化に気づき、どう応えていくかを一つひとつ考えてきた結果として、貧困家庭の支援など現在の活動に取り組むようになっている。

「笑顔を隣人と分かち合えば、世界はもっと良い場所になる」。皆様と共に楽しい笑顔を周りに振りまいて、前へ進んでいけたらと思う。

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