2017.4.19

―新会員スピーチ―
「フィデューシャリーデューティと信託について」
三菱UFJ信託銀行(株) 京都支店 執行役員 京都支店長
辻 義輝 君

最近「フィデューシャリー・デューティ」という言葉を目にする機会が増えた背景は、金融庁が金融機関に対し「顧客本位の資産運用業務」を求め、その行動原則として提唱していることによるが、本来の意味はもっと広い範囲をカバーする概念である。「フィデューシャリー」とはラテン語の「信頼・信用できる人」に由来しており、信託もこれにあたるとされている。信託のフィデューシャリー・デューティとは、相手から信頼を託され専門性の高いサービスを提供するだけではなく、自発的に相手に尽くす道義的・倫理的義務も含めた、通常の契約関係以上に厳格で高度な責務とされ、法的義務を遵守するだけでなく、より一段上の義務を負っていると考えられている。信託の歴史を振り返ると、古くは古代エジプト時代にその発想は始まり、中世イギリスで使われたユースの仕組みを制度の起源として、その後アメリカでトラスト(信託)としてビジネスに成長。日本でも明治38年の担保付社債信託法からスタートし、信託法・信託業法の制定、貸付信託の発売など大衆化の時代、土地信託や教育資金贈与信託など多様化の時代を経て、わが国における信託の受託残高は昨年11月に初めて一千兆円を突破。時代や社会の変化に対応しながら未だ拡大を続けている。どの時代にも共通するのは、願いを込めて大切な財産を託す委託者、信頼を受け止めて託される受託者、託された財産から利益を得る受益者から成る信託の本質「信頼の三角形」であり、信託のしくみ、そのものがフィデューシャリー・デューティと言っても良いと考えている。これを真の意味で実践して行くことは、口で言うほど容易ではないが、今後も信託の活用の幅は更に拡大が見込まれることから、弊社ではこの「責務」を果たすべく、より自発的、かつ先進的に取り組むことを敢えて「戦略」として掲げている。私はフィデューシャリーとしての理想に近づく努力を続けることが大事だと思っており、信託のしくみを通じて、京都の地の発展にも貢献して行きたいと考えている。

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