2014.10.29
「癌局所療法 ―新しい癌治療―」
京都府立医科大学 教授、会員
三木 恒治 君
癌局所療法(Focal therapy、FT)は、癌の部分だけをピン・ポイントに治療することによって、癌の制御とともに標的臓器の機能温存を図り、低侵襲治療として治療に伴う合併症を軽減することで治療の適応の拡大をはかり、患者さんのQOLを高めることを可能にする。またFTは原発巣のみならず、転移巣であっても、通常の放射線や手術療法などに代わる、より低侵襲治療な局所のコントロールのための方法として有用である。
近年FTが注目されてきたのは、FTを可能にする様々なテクノロジーの進歩が挙げられる。画像テクノロジーの進歩で、以前は穿刺できなかったような部位の穿刺が可能になってきたことも大きな要因である。FTの方法としては、腹腔鏡、内視鏡手術などの低侵襲な手術療法、放射線療法、動脈塞栓療法、ニューエナジーソースによるablation(組織破壊)などがあるが、それぞれの分野で技術革新がめざましく、以前は不可能であったFTを可能にしてきた。
エナジーソースとしては、ラジオ波治療、凍結療法、 温熱療法、レーザー照射、光線力学的治療、高密度焦点式超音波療法(HIFU)、Irreversible Electroporation (NanoKnife)など、選択肢が広がってきた。さらに放射線治療もIMRT、サイバーナイフ等の他に、重粒子線治療、さらには中性子捕捉療法(BNCT)などがある。動脈塞栓療法も肝癌などでQOLの高い治療成績が得られている。これらの治療機器を総合的に導入したがん局所療法センターを設置することで、治療の選択肢が拡大し、幅広いニーズに対応が可能となる。がん診療連携のネットワークの構築を推進し、早期がんのみならず、進行がん・難治がんを対象に局所療法を加味した集学的治療体系を構築し高度緩和医療の設立をおこない、がん難民をなくすがん治療を行うべきである。今後の超高齢化社会を迎えて、がん患者はさらに増加し、高齢者に優しい低侵襲で、医療費抑制にも配慮した、安心安全な癌局所療法が求められる。
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